はじめに:AIは「近道」ではない
AIの進歩は、創薬の在り方を大きく変えつつあります。構造予測、ターゲット探索、バーチャルスクリーニング、文献の自動解析――これまで人間が膨大な時間をかけて行っていた作業が、わずかな時間で自動処理されるようになりました。
しかし、「AIが自動で正しい仮説を導いてくれる」という幻想が一部で広がっていることに、私たちは危機感を抱いています。
AIが正しいアウトプットを出すには、“信頼できるインプット”が不可欠です。
本稿では、AI創薬における「再現性」と「情報の信頼性」という根源的な問題を取り上げ、なぜ今なお“人間の判断力”が重要なのかを解説します。
AmgenとBayerの検証が示した、過去データの限界
過去の論文・データベースをAIが学習し、創薬に活用するという構造自体は有効です。しかし、前提となる「過去の知識が正しい」かどうかは、個別に検証される必要があります。
この点で、業界に大きな衝撃を与えたのがAmgenおよびBayerによる再現性の検証結果です。
- Amgen(2012年):53本の著名ながん関連論文中、再現できたのは6本(約11%)
- Bayer(2011年):67件の創薬ターゲット検証研究のうち、再現性確認は20〜25%
これらは決して「ねつ造」の指摘ではありません。むしろ、前臨床や探索的研究において、再現性が保証されていない知見が一定数存在するという現実を示しています。
「査読済=信頼できる」という誤解
学術論文は査読を経ていますが、それでも以下のような構造的問題が潜んでいます:
- 統計手法やp値の恣意的な扱い
- 前処理・正規化などrawデータ処理の違い
- 細胞株やロットのばらつき
- 方法論の記載が不十分で再現できない
AIはこれらの文脈を理解できません。そのため、“質のばらついたデータ”を同列に扱って学習してしまうのです。
科学には“信頼ネットワーク”という暗黙の仕組みがある
研究現場では、再現されなかった研究が即座に否定されるわけではありません。代わりに、非公開のネットワーク内で自然に淘汰されていきます。
- 引用されなくなる
- 共同研究から外れる
- 業界内での招待や評価の対象外となる
これがいわゆる“名前を出さない制裁”です。AIには見えない、信頼に基づく科学的選別システムが静かに機能しているのです。
AIにはこの信頼構造を読み取ることができない
| AIができること | AIができないこと |
|---|---|
| 文献からパターンを抽出する | ラボや研究者の信頼度を評価する |
| 構造予測や類似性分析を行う | 生物学的妥当性や再現性を見極める |
| 大量データから新規仮説を提示する | 業界内の「空気」や非公開情報を反映する |
Bloom X³の役割:知の“フィルター”としての機能
私たちは、AI創薬におけるリスクを回避し、“信頼できる知”を選別する判断のパートナーとして機能します。
- 科学者としての実績(論文・共同研究・翻訳研究)
- VC・CVCとしての案件評価・投資経験
- 国内外ラボとの長期的ネットワーク
- グローバル実験パイプラインの可視化と連携
「科学的に再現性があるか」「戦略として妥当か」「社会実装が可能か」を一貫して見極め、情報のノイズを除去するフィルターとして皆様と並走します。
おわりに:AIは強力だが、最終判断を下すのは人間である
AIは強力なツールであり、創薬加速の鍵でもあります。しかし、それを正しく使いこなすには、情報の出所と妥当性を見極める人間の力が欠かせません。
「誰が語ったか」を見極める力――それがAI時代の真の競争優位です。
ご相談・連携をご希望の皆様へ
Bloom X³は、AI創薬支援、創薬仮説の評価、パートナー候補の信頼性レビューなどにおいて、科学的信頼に基づくアドバイザリーを提供しています。
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